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ささやかな矜持。

 結局、彼の本意は、固い表皮に覆われ過ぎて、陽の目を見ないで
 朽ちてしまう。したいことはできないし、できることはしたくない。*

暑い夏がやって来たようで
夏といえば、海・空・太陽なのだろうけど
僕の場合は、ほんの少し違います。

蒸し暑い部屋、草の匂いと渇いたグランドの土けむり
あとは、容赦なく照りつける太陽。
あからさまな悪意を誇示するかのような陽射しと
それが強要する圧倒的な諦念
つきつめれば、どこまでもネガティブな、死のイメージに逢着
そのせいもあってか、昼下がりに思い出すのは、父のこと、だったり。

どこにでもあるような、誰だって抱えているような
そういう、小さな小さな物語で
けれども、個人的には、どこまでも深く、重く
とてもとても大事に思えるような話

 気質的には完全に文学青年だったと思う。文学の造詣は、必ずしも深くは
 なかったが、明瞭にならない何かが語りたい筈であった。(だが)とうとう
 最後まで、ただの1行も書けなかった。
 平素、巷の埃を浴びていると、いちばん大切にしていたものと向き合う
 とき、ピュアになり過ぎて、身動きとれなくなってしまうのである。*

屈託が凝り固まったようなひとでした。
どうやら、本意とはかけ離れた生涯を送ったようで
だから、あまり笑顔の記憶がありません。
けれども、いったい何が彼の本意だったのかもよくわからない
恐ろしく無口な人でした。

父について語ること
ごくごく大雑把に言って、たぶんこれが、僕の仕事であるように思えます
それから、じぃさんやばぁさん、母のことも
贖罪、というか、何と言うか
あまり自信はないですが、たぶん、そんな感じです。

 パパは、たとえば川端康成の『雪国』以上に、雪がしんしんと降りつもる
 描写が書けるようになってから韓国のことを書いても、遅くはないと思う
 のです。それが、作家を志したパパの意地でもあります。*

4歳になる娘さんに語りかけるという手法で、自身の出自を綴った作品のなかで、
戯作者のつかこうへいさんが仰っていることばです。

僕の矜持も、ここにあります。
作家を志しているというわけではないのですが。


  引用文献 (*印箇所) 
色川武大  『怪しい来客簿』 (文春文庫 1989年)
つかこうへい『娘に語る祖国』 (光文社 1990年)
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by mockin_snofkin | 2005-07-28 22:52 | 来し方、行く末。
バーキンから、青首大根。

夏休みの留守番
ぶさいくな阿呆犬とともに、2匹。
家族旅行だって
とーちゃんは、どぉやら家族ではないらしい。
薄々気づいてはいたが。


朝から、掃除に洗濯
水打ち、ゴミ出し、朝食の準備。
って、朝食の準備は、トマトをひとつ、洗っただけだが。

洗濯を干して、朝のお仕事。
昼過ぎに帰宅して、水打ち、買い物。
昼食に、桃をひとつ、食す。


さて、と、一服してたところに、おぱんつ。

  とーちゃん、今日は祭りだよ、花火だよ、娘はヒマしとるよ!

どうやら、とーちゃんの娘は、みんながみんな、ゐぬだったみたいです
留守番しとるから、とーちゃんは、パス、というと

  なにっ、とぉとぉホントの身内からも捨てられたか!

娘として生まれ変わったおぱんつは、口調まで、様変わり

  よしっ、じゃあ今日は、家に行って料理つくっちゃる!

断る、って言ったところで、聞かぬは承知しとるのですが、抵抗してみる




ちゅんちゅら、ちゅんちゅら、ちりんちりん
銀色のママチャリを駆って
昼下がりのきつい陽射しと、アスファルトからの反射熱
つゆだくの汗が、サドルに浸水する直前に、駅。

遠目からもイッパツで判る、凛とした娘の勇姿
本日は、黒いノースリーブのサマースーツ
肩に背負った鞄からして、たぶん、全身エルメス、だと思う。
家事を手伝う気なんて更々ないよ、って意思表示か?
ともかく、少し離れた電柱の影に隠れて、電話
目立ってしゃーないので。

再び、銀のママチャリを駆って、こんどは家路を急ぐ
後ろには、涼しい顔のおぱんつ。
わざと足を前後にぶらぶらさせるので、そのたびによろめく
小学生か、お前は?
って、こどものわりには、あまりに手足がしなやか過ぎるが。

案の定、おぱんつは、家事をまったく手伝わない
代わりに、わが家の阿呆犬と意気投合
料理の下ごしらえを顎で指図しつつ、ゐぬ同士、じゃれて遊んでやがる
いつの間に押し入れから引っ張りだしてきよったのか
とーちゃんの高校時代のジャージに着替えて。


たまりかねて苦言を申し立てると

  絶対に甘やかせたらいかんと心に決めたから

って、心底にくったらしい顔で吐かしよった。
鬼の首でも取ったか、おぱんつよ?
四つん這いになって阿呆犬と格闘しているおぱんつの桃尻を蹴っ飛ばす
すると、阿呆犬が滅茶苦茶に怒りだす
釣られて、おぱんつもぎゃんぎゃん吠えよる
ほんと、仲の良い姉妹だね、きみたちは。


夕食の下準備ができたところで、おぱんつは帰宅
仲良くなった阿呆犬と別れるのが少し名残惜しいようだった。


今日の夕食は、和風ハンバーグ
おろしポン酢でいただきます
のはずが、結局は、ウスターソース。
本日の主役である青首大根が、おぱんつといっしょに帰っていったので
買い物かごとなった、水色のバーキンに揺られて。
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by mockin_snofkin | 2005-07-26 11:54 | 娘と妹たち
さいしょのかーちゃん。
その看護婦さんは、透きとおるような真白な肌をしていて
右の目許の泣きぼくろが、とってもせくしぃな女性でした。

手術後の容体を気づかってくれたのか、ベット脇の枕許近くにしゃがみ込み
横たわったままの僕と同じ目線で、彼女は、手術の経緯などの簡単な説明を
はじめました。

けれども、何を言ってるのかさっぱり。
少し頭の位置をずらして、注意深く話を聞こうとはしました。
でも、まだ麻酔が抜けきらず、意識が朦朧とするなかでは、彼女のいうことが
ほとんど理解できませんでした。

ハッキリと認識できたのは、ただひとつ。
ベッド脇にしゃがんだ彼女の両膝の間から垣間見えるもの
彼女の、淡いぴんくのパンツ、だけでした。

説明を終えた彼女は、最後に、
「何か伝えておきたいことはありませんか? 何でも遠慮せずに言って下さい」
というようなことを、柔らかい笑顔で尋ねてきました。

ともかくもそのときは、
『何でもいいから思ったこと、気になったことを伝えなければならない』
ということだけを考えていたのだと思います。
状況に配慮する余裕がなかった、といいますか、そんな感じ。
手術後すぐの事であったし、それに、まぁこれは後から判ったのですが、当時は
40度近い高熱にうなされていたので。

だから、そっとささやくような彼女の問いかけに、軽く頷いた後、
「パンツ、見えてる」
と、そのときいちばん気になっていたことを素直に伝えました。

でも、呟くような言葉がよく聞き取れなかったようです。
柔らかな彼女は、
「えっ?なんですか?」
と、はずみで頬が触れるくらい、耳を口許にぐぐっと近づけてきました。

できるだけ楽な姿勢を保てるように、との、たとえそれが職務上の行為で
あったとしても、その職責を充足して余りあるような、きめ細かやかな心遣い。
高熱にうなされるなか、そんな優しさを思いました。

ならばここは、精一杯の誠意をもって応えなきゃあ、いかん、よね。
できるだけ咽を反らせ、こちらからも耳許に近づいてみる。
けれど、首筋。
せいぜい耳たぶの辺りまでしか届かない。
だから、少し声を張って、もういちど、
「パンツ、見えてます」
と、こんどは少し丁寧なことばに改めて、いちばん気になっていたことを
はっきりと伝えました。

やや間がって、わずかに、のけぞる。
首筋から頬、それから目元のあたりにかけて、白い肌が、みるみるうちに
薄桃色に染まっていきます。
ほんの少し眉をひそめ、何だか困ったような、怒っているような
それでいて、口許に静かな微笑を浮かべ、無言で暫く僕を見つめていました。

そのときの、かすかに潤んだような瞳が、とってもエッチでした(100点)。



かーちゃんにしたい、って思っても不思議ではないでしょ?
誰だってそう思うはず。
って、かーちゃんになったのは、ずっとあとの話だけど
柔らかい彼女は、柔らかいままでした、とさ。
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by mockin_snofkin | 2005-07-11 13:37 | かーちゃんず