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2006年 01月 11日 ( 1 )
ふと、思い出した。

きらびやかでもないけれど
この一本の手綱をはなさず
この陰暗の地域を過ぎる!
その志明らかなれば
冬の夜を我は嘆かず
人々の憔懆のみの愁しみや
憧れに引廻される女等の鼻唄を
わが瑣細なる罰と感じ
そが、わが皮膚を刺すにまかす。

蹌踉めくままに静もりを保ち
聊かは儀文めいた心地をもつて
われはわが怠惰を諌める
寒月の下を往きながら。

陽気で、坦々として、しかも己を売らないことをと
わが魂の願ふことであつた!



[ 中原中也 「寒い夜の自画像」]
 
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by mockin_snofkin | 2006-01-11 02:54 | 来し方、行く末。