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次代のプロ野球 = その2 =

練習を終えたロッカールーム。
正一君からの手紙を読む上原投手の手は、怒りに震えていました。

  「こんなことが許されていいのか!」

そのとき、憤懣やる方ない上原投手の肩に、そっと手がのびました。

  「上原、やってやろうじゃないか」

振り返るとそこには、プロ野球を心から愛する、燃える男・長嶋茂雄
終身名誉監督の姿がありました。

  「はいっ。是非、僕にやらせて下さいっ!」

意気に感じ、燃える上原投手。

  「でもな上原、怒りに燃えてはダメだ」
  「・・・・?」

若き勇者は、長嶋名誉監督のいうことが理解できませんでした。
長嶋名誉監督は、あくまでも優しく

  「いいか、燃える時は、正義に燃えるんだ。
   どんなときも、わがじゃいあんつは正義を忘れてはダメなんだよ」

と、諭します。

  「・・正義に燃える。そうか、正義を忘れてはいけないんだ」

改めて、栄光あるじゃいあんつの使命を認識する上原投手。
そんな彼を、長嶋監督は、眼を細めて見つめました。


こうして始まった覆面球団との試合は、1点差、じゃいあんつ優勢のまま
9回裏の裏を迎えました。
途中、覆面球団は、予想通り、凶器攻撃、宣告なしの選手交代、15人での
守備といった、まったくルールを無視した横暴ぶりを発揮しました。
しかし、迎え撃つじゃいあんつは、上原投手の力投に加え、正義に燃えた
清原選手の逆反則攻撃、曲者元木のペテン師バッティングなどなど、
それをしのぐスーパーぷれぃを連発したのでした。

回を追うごとに白熱する試合に、スタンドの観客たちは、じゃいあんつの正義に
酔いしれ、同時にまた、卑劣きわまる覆面選手たちに罵声を浴びせました。

ところが、上原投手は、ある男に、悪逆非道の限りを尽くす他の覆面選手とは
違うものを感じていました。
バッターボックスに立つその男は、燃えるような眼で上原投手を睨みつけ、
真っ向勝負を挑んできたのでした。

  「あの男、他のヤツらとは何かが違う。一体、何者なんだ??」

ベンチでひとり、そんな思いをめぐらす上原投手。

  「野球を愛してやまない男は、じゃいあんつの選手の他にもいるんだよ」

突然の声に驚き、顔をあげる上原投手の眼に、長嶋名誉監督の笑顔が
映りました。

  「正々堂々と、勝負してきなさい」

長嶋名誉監督のことばは、すがしい風のように、上原投手の心を吹き抜け
その霧をきれいにぬぐい去りました。


まるで少年のように眼を輝かせ、最後のマウンドに立った上原投手。
2アウトをとったところで、あの男が、その前に立ちはだかりました。

カウント、2ストライク3ボール。
最後の打席の、男と上原投手の勝負は、すでに20球を超えていました。

  「これで最後だっ!」

渾身のストレートを投げ込む上原投手。
男も負けじと渾身の力で打ち返す。
バットがヘしおれたのにもかかわらず、ボールはライト前へ。

  「・・・負けた」

がっくりと膝を落とす上原投手。
しかし、男は、一塁ベースにたどりつくまえに、力つきて倒れ込んでいました。
ボールは、一塁の清原選手へと渡り、ゲームセット。
試合は正義の味方、じゃいあんつの勝利に終わりました。

正義と平和の到来に沸き上がる観客。
その勢いのまま、誰もがグラウンドへとなだれ込にできました。
みなが勝利に酔いしれるなか、上原投手の視線は、自分と正々堂々と勝負し、
そしてまぎれもなく勝利した男に向けられていました。

力つき倒れ込んだ男に駆けよる上原投手。
自分を抱き起こす上原投手に、男はこういいました。

  「・・マスク、はずしてくれや」

上原投手は、その素顔が好奇の眼に曝されることのないよう、そっとタオルを
かけ、マスクを剥がします。

  「これを、受け取ってくれ」

マスクを上原投手に差し出す男。

  「・・おまえに、もらってほしいんだ」

タオルからのぞく素顔には、全身全霊を込めた勝負を終えた、至福の笑みが
浮かんでいました。


男は、元プロ野球選手でした。
誰よりもプロ野球を愛し、また、誰よりもプロ野球の厳しさを理解した男。
その限りない愛は、引退した後においてもなお、否、引退した後において
なおいっそう激しく燃え続けたのでした。

  「もういちど、真の勝負がしたい」

しかしその愛は、引退した男には決して許されるものではありません。
許されぬ愛は、男に、決して名乗ることを許されぬ悪の覆面選手として、
再びグランドに戻る道を選択させたのです。
その生涯をかけて、プロ野球への愛を貫こうとした男の名は、門田博光。
その名が、たとえ唾棄すべき男の名として人類の歴史に刻まれようとも、
その愛が、男・門田をして、グランドに向かわせたのでした。


汗と涙と土埃で薄汚れたマスクに、プロ野球への愛に生きた男・門田の
野球への限りない情熱を想う上原投手。

  「・・門田さん、あなたの『愛』は、僕が受け継ぎます」

決意も新たにグラウンドを後にする上原投手。
その姿に上原投手の成長をみて、静かに微笑む長嶋終身名誉監督
そのそばには、3人で無事を祝う山田さん親子の姿がありました。


(おしまい)




自分でいうのもなんですが、完璧なシナリオだと思われます。
これで確実に、プロ野球は生まれ変わります。
日本に、愛と正義と平和がおとずれることになるのです。
間違いありません。
どうか皆様、信じて下さい。
ともかく、来季こそは・・。


じゃいあんつ、ばんざい。
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by mockin_snofkin | 2005-09-09 00:32 | minima moralia